モーリス・ラヴェルが好き その1
僕はレジ打ちのバイトを始めて早6年が経ちます。続けて同じ商品を打つとき「同一ラベルです」と機械が喋ります。モーリスラヴェルだなあと、いつも思っています。
さて、「管弦楽の魔術師」と呼ばれているラヴェルと言えば『ボレロ』や『展覧会の絵(管弦楽編曲)』なんかが有名でしょうか。
しかし僕は、何より彼の書くピアノソロの曲が特に好きなわけです。今回はちょっと説明臭い文章が続くかもしれません。ご容赦を。
数あるラヴェルの曲の中で、個人的に特に好きな『クープランの墓』と『ソナチネ』について紹介していこうかと思います。本当は他にも好きなのあるよ。ベタに水の戯れとか、前奏曲とかね。
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『クープランの墓』は、バロック時代に活躍したフランソワ・クープランに因んでバロック音楽の形式を再構成しながら書かれた組曲です。
僕はその中でも特に『リゴドン』と『トッカータ』が好きなので、その二つについて書きます。
リゴドンは非常に生き生きとしていて、ハ長調(C Major)であることも相まって安定感と元気さがあります。中盤に同主調のハ短調へ転調し、終盤また冒頭テーマに戻ります。この三部形式はシンプルながらも物語性を感じさせ、音使いとしては古典的な舞曲テイストを残しながらラヴェルらしい浮遊感も残された楽曲としてまとめられています。何せこの、ハッとする最初のフレーズが堪らんのすよ。
トッカータは同音連打から入り、素早いテンポでミニマルな印象のまま展開していきます。徐々に壮大になって、そのまま終わります。最初は高音部で重ねられる細々した音の粒が、低音に移動してから不穏かつダイナミックでピアノらしい雰囲気にグッと入れ替わるのが非常にかっこよく、一方通行に盛り上がっていく感じが最高です。
冷えた朝に鳥が飛び立ち、少し凍った湖や露の丘の上、段々と勢いを増しながら地面スレスレを凄まじい速さで飛んで、最後には空の上へ急上昇した後に小さな家の屋根に何食わぬ顔でちょこんと降り立つ。そんな映像が見えます。
とにかく、傑作と言っても良い素晴らしい曲です。
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『ソナチネ』は三つの楽章からなる曲です。
第一楽章は、ラヴェルらしい不思議な和音と古典的な雰囲気が見事に融合した曲です。特に4度、5度の動きや響きが多く使われていながら間を埋める動きで調性感を保っているところがよくできているなと感じます。個人的には比較的落ち着いたテンポで弾かれている方が鮮明に見える気がして好みです。
第二楽章は第一楽章よりもわかりやすくメロディックで、直感的に良い曲だなと思わせられる曲です。印象派らしい淡い色彩が目に浮かび、水面に反射する光がゆったりと揺らめいていそうです。その揺らぎに合わせて優美に踊る女性の姿も目に浮かびます。
ポップスに通ずる部分があるというか、本当に誰でも聞きやすい曲だと思います。そんな聞きやすさがありながらもどこか古典的で、非常に洗練されており無駄がない印象を受けます。そして、緊張した和音と安定した和音の往来が巧みで、これが美しい和声というやつなんでしょう。音大教育は受けていませんので、雰囲気ですよ。
第三楽章は自由に暴れ回っていて、乱雑に光が散っているような印象を受ける曲です。アルペジオが複雑な和声をなぞって、自然由来の雄大さを感じさせながらも、人間の衝動も詰まったようなエネルギッシュさがあります。ギラギラしたイメージが強く前に出ている気がします。
僕は三つの中だと第二楽章が一番好きです。
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何度か古典的という言葉を出したように、ラヴェルは前時代の音楽をよく研究し、自身の作品に活かしていたといいます。同じ印象主義として並べて語られるドビュッシーとは全く違うアプローチで、同じ時代のフランス音楽を支えたのです。フォーレからの系譜や、この二人の違いについて比較するとまた面白さがあります。近いうちにドビュッシーも書きたいな。
最後に、是是には『In Bloom』という曲があります。これはギターの”よ”が作った曲ですが、実はLaurindo Almeidaの『The Lamp Is Low』を借用したフレーズがIn Bloom冒頭のピアノに使われています。そして、The Lamp Is Lowはラヴェル作曲の『亡き王女のためのパヴァーヌ』を原曲としています。
つまり、間接的に我々はラヴェルの曲をサンプリングしていたというわけです。いやはや、ラヴェルに心からのありがとうを。

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